昨晩友人Aと行った居酒屋は新鮮な魚介類を売りにした店でありました。
正月の催しのようで、店内には「活魚半額」の文字が躍っていたのであります。
「なあ、ヒラメの刺身(1,980円)も半額らしいぜ」
「なんと。そいつぁ、安いじゃあないか」
「よし、そいつを一つ頼んでみるとしようか」
「さうだな。そいつぁ名案だ」
てな具合で頼んだヒラメでありましたが、このとき我々はある事実に気付いていなかったのであります。
さてさて、話も盛り上がってきた頃、ヒラメの刺身がやってきました。
「ベチッ」
ヒラメの尾が鍋用の卓上コンロを叩きました。
ボケる前からつっこむ奴があるかなどと、ヒラメにツッコミを入れる余裕などあるはずもなく、二人は一瞬固まりました。
【活魚】生きたままの状態で小売店や旅館・料理屋などの生簀で飼われ、消費者に供される魚介類をいう。関東では文字通り活きたままの魚を指すが、関西では市場に出す直前に活きている魚ののどを切って生け〆にしたものを指す。 『
民明書房マイペディア』
我々は関西版活魚を想定していました。
ぜい肉どころか、必要なお肉も削り取られたヒラメさん。
貴方は、悔しいほどに旨い。
だから、あまりこっちを見つめないでください。
そして、お願いですから口をぱくぱくさせないでください。
吹き替えごっこをしたくなります。
貴方の生命力、美味しくいただきました。
貴方の一挙一動、胸がちくちく痛みました。
退職後、縁側でお茶をすすることも、もうできないのですね。
ヒラメさん、貴方のことは忘れません・・・。
本当にご馳走様でした。
(不謹慎な表現がありますが、本当は結構凹みました。不器用な現実逃避です。人間も、他者の命をいただいて生きているのだということを、生々しく感じた夜でした。)
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